鳥 雲 に

あとがきに声紋のあり秋時雨
後ろ手に本気の恋を枯蓮
眼帯を今日は外す日大花野
月夜茸びっしりとある老斑
序列などもとよりなくて冬紅葉
故郷が小さくなって雪三日
駅三つ過ぎしころより雪降れり
オブラートきれいにつまめ鳥雲に
陽炎の向こう気ままに見えにけり
連翹噴く傾いていく人体図
輪郭が整うまでの春の山
寝転べば春愁という布袋
鳥帰る値踏みしている古本屋
青嵐の気配靴紐結びけり
ペン先のインクだまりや余花残花
ふいっと過ぎし不愉快もありひつじ草  
錠剤三つ後からついてくる穀雨
片思いしてからの嘘白桔梗
どんぐりを光源氏のように踏む
夏帽を句碑にかぶせて帰り来ぬ
一切をいれぬ八月の頭陀袋
人の面外しきったる三尺寝
ある日ふとある時ふいっと貝風鈴
木に木相石に石相送り梅雨
全部言うつもりの背高泡立草
白露かなきちんと揃う針の糸
野分あと碑文ゆっくり光り出す
秋の訃や下りてくる一行詩

2007年(平成19年) 氷原帯投句作品
 

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