生 年 月 日

新米の一粒ずつにある出口
まどろみの中のひといろ鳥かぶと
萩一重二重繰り出す波頭
人間の顔して藤の実落ちており
やわらかな自縛冬晴れを遠ざける
あの世からこの世からとて雪六花
風花の終焉いかにも泥くさい
心音の縦横無尽ひこばえる
確かめるわけではないが冬星座
ゆず湯して生年月日を解体す
十二月畳のへりという長さ
年はじめだるい柱と二人いる
このままの時間がよくて軒氷柱
目配りがよく利いている春にしん    
立春の菜箸かたりことりかな
青菜飯ひとつひとつが事実なり
一途なる恋にいろあり放哉忌
さくら蕊舌の痺れのように降る
少年の声真っ直ぐにつつじ濃し
青葉風てのひらに乗せ退院す
後もどりして流星の下に立つ
月見草開いたところから鳥語
炎昼の利き腕毀れはじめおり
石という石が物言う原爆忌
性的に秋日戸口を軋ませる
方程式考えているななかまど
綿虫や深いところでさざなみ
鏡中にまぎれ橡の実育ちたり

2004年(平成16年) 氷原帯投句作品
 この年,氷原帯新主宰に谷口亜岐夫氏。

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