パ セ リ

綿虫の重さがいたい薬包紙
死ぬ日などなく霜柱かるく踏む
ポインセチア触れて一人と一人かな
ストーブを背にしてからの男声
大旦器の中にはピアス
生年月日たばねられてる葱の青
なめらかに通す我まま冬青空
如月や水の匂いと万華鏡
自叙伝の真ん中大根煮崩れる
本棚の向こう菜の花明かりかな
四角四面に来る月曜の花明り
忘れ霜昨日をたたむ音がする
柳絮飛ぶ育ち盛りの素手素足
クロッカス咲いて好戦的な午後
缶切りの錆が運んできた穀雨
いっせいに星座を目指す花こぶし
無重力的けもの的パセリ
一村を曳いてくる気の蝸牛
すっぴんの顔がひりひり青時雨
天気よく機嫌よく蓮華
あめつちの阿吽の呼吸花しょうぶ
石段やひいふうみいよ滴りぬ
つくづくにわれも隣人桃の昼
水切れの悪い箒だ八月
今日だけの蜂起背高泡立草
文脈があやしくなりし野分あと
勘当を解かれておりしゆきばんば
サインコサインつんとすましてけむり筍 

2003年(平成15年) 氷原帯投句作品
 

- 35 -
  

【花畔・網】