笹 の 音

玉葱の芯に行きつく青嵐
後ろ手に朧乳房の尖りたる
草の実飛ぶ息整えている時間
ぐらり鯖雲地表の際におく五感
笹の音がきれいで命惜しくなる
白木蓮旅のつづきの闇の闇
晩菊や聖書ゆっくり裏返す
一人来て一人のおとうと実鬼灯
もうすでに人参刻みの入り日かな    
たっぷりと西日墨汁注ぎ足しぬ
すべからく玉石混淆初紅葉
硝子屋の前は迂回路黄落期
秋桜定年という置き薬
コスモスの風がびっしり鯨幕
人形が目を持ちたがり銀杏散る
踵まで預けて銀杏降らせおり
萩の雨静かに吹けよ米二合
雪虫来る退屈なもの鍵の束
風花のうわさつんつん髪匂う
ていねいな口上ありて結氷期

2002年(平成14年) 第46回 北海道俳句協会賞 応募作品
 

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