男 箸

銀杏散る一つ言葉を手もみして
木と木と木冬は林立の容する
遣り過ごす十二月八日の新聞
黒猫に背鰭あるらし小六月
湯豆腐を崩す年功序列とは
切り口のいつか曖昧年の酒
流氷来ことりと落ちる男箸
足裏からねむーくなって冬すみれ
初晴や寺山修司と街へ出る
四の五のと言わずもがなの初湯かな
春の山骨を調合しておりぬ
不器用を決め込んでいる芹なずな
糸底を美しくして春の山
からくりを考えている木の芽時
水温む猫は猫語で押し通す
箒の目今日は春愁あたりまで
風音や東西南北葱坊主
負ける気がしない五月のつくしんぼ
筍カツカツコツコツよもつくに
花すぎの風に鶏卵真っ二つ
骨片となるまで玉葱きざみおり
ほうき・ちりとり投げ出して花の昼   
葉桜のあちらこちらに沸点
ぐし縫いのすこし乱れて桜桃忌
修正液空っぽにして夏山河
牛飼いの溜息新茶一杯分
生者死者こぞって渡るとんぼ橋
一村を平折りにして雷去りぬ

2006年(平成18年) 氷原帯投句作品
 

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