芹 の 水

雪虫にぶつかっていく更年期
平凡が行ったり来たり野分あと
米二合きちんと炊いて一葉忌
さっぽろを抜ける小春と救急車
おでん食う土地勘すこし鈍らせて
肩書きのなくていい顔深雪晴
箸でふくめて噛んでふくめて初景色
間尺に合わぬ話それから雪女
句読点のような月あり鬼やらい
人の匂い消したいときに雪を掻く
海鳴りとも山鳴りとも雪が鳴く
ふるさとをぶつ切りにして鳥雲に
牡丹雪そちこちにある突っかい棒
芹の水記憶だんだん丸くなる
オーブンの高温設定春の暮れ
歳時記を食い尽くしたる青葉風
風袋を懇ろにして春愁
四、五日は卵の衣夏山河
聖五月甕のかたちの文学館
レタス割る等分にして敵味方
喜雨しきり卵かけご飯がうまい
偶然が真っ直ぐに来る白牡丹
ブロッコリー噛むたちまちのきのこ雲  
散るための時間を歩く花かんぞう
けれんみのない空だった蕎麦の花
蜻蛉湧く脚本はこれからです
いつのまに売家 科白のように秋
林檎箱ムカシムカシが顔を出す

2005年(平成17年) 氷原帯投句作品
 

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