桐 一 葉

八月やあとからあとから音がくる
七曜の水のつぶやき終戦日
広辞苑におさまりきれぬ水澄まし
六道を抜けてきました捩り花
明るさを担ぐ危うさ祭りの子
産土の心音たとえばあかざの実
てにおはに紛れこんだる蝸牛
滝落つる幕間はげしく鼓動して
立て梯子風一様に蛍草
彼岸花つと立ち上がる闇の中
まひるまの明るさを脱ぐ曼珠沙華
曳くもののすでに胸中秋ざくら
切り株の切っ先に惚れ秋ざくら
桐一葉真っ正直に日の傾ぐ
てのひらのぬくみじんじん青胡桃
人容れてからの風色唐辛子
大空に酢の匂いする花白粉
不条理がいつか身に添う花すすき    
銀漢や拾いあつめた木の名前
残されし蝿とわたしに十三時

2004年(平成16年) 第38回 北海道俳句協会賞 応募作品
 

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