棒 の よ う に

うす味にして暮れにけり菊日和
触れた気でいた綿虫の二つ三つ
落葉掃く四角四面が楽しくて
八月忌こんなに白い茹で卵
夕焼けがごそっと落ちる河口かな
漱石の四角いカバン麦の秋
耳裏に白き部屋あり虎落笛
十二月八日てぶらで暮れていた
「ひとりがいい」きっと私も雪女郎   
抱かれても抱いても三日シラカンバ
一人になる怖さいつまで芹なずな
ぶらっと来てぶらっと帰る春愁い
視力一・二貝印カミソリ春隣
囀りや脱ぎちらかしている手足
春帽子脱いでまた見る麟太の碑
花林檎いのちさみしき人といる
バスが来てバスの人なる桜桃忌
使われぬポケットのあり青時雨
なんて暑さなんだ棒のように歩く
二人いて二人の茶碗原爆忌
聞き耳をたたんでおりし花しょうぶ
乾麺を放つ大鍋花の冷え
一日を一掴みして青葉騒
少しだけ海を見ている唐辛子
菊花展うなじの寒い菊ばかり
括られてからの出奔吾亦紅
利酒の指の先から男声
振り返る時間秋桜日和かな

2010年(平成22年) 氷原帯投句作品
 

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