さ く ら

木の芽風ひとりがよくて吹かれけり   
心臓の上まで春の来て止まる
この角にあの人の家春霞
ご無沙汰のつづきのような花杏子
院長は長い留守です笹の音
ポケットにキャラメル三個花ゆすら
春落葉一人で踏んで頷いて
花を待つついでの用事ふえてゆく
桜一枝バックに隠し会いに行く
見えていぬ桜だったと今おもう
彼岸まで持って行ったか桜花
かあさんに冷たかったね花筏
抽斗に母の短冊飛花落花
天と地のあわい桜と歩きおり
留守電の声はわたくし花曇

2017年(平成29年) 氷原帯 企画同人 特別作品
 

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