春 の 鴨

花菜月何度も枕裏返す
手のひらに落す岩塩桜東風
たっぷりとバターいつしか鳥雲に
山間に花の日差しを拾いおり
春の鴨残生という時間かな
ふるさとが束ねられたる貝櫓
青梅をころがしている日本海
木蓮の眠い時間に家を出る
コスモスが似合う郵便ポストまで
白芙蓉目瞑る時の景色かな
廃橋の荒びにまかせ秋涼し
折鶴を上手に立たせ紫苑晴
耳裏にせせらぎの音菊日和
反魂草ダムに沈みし村数多
きのうからここが船瀬かアブラガヤ   
永遠を疑いもせず吾亦紅
振り向かぬ約束なのに赤のまま
大花野胸戸一寸開けておく
数学は今でも苦手男郎花
口開くたびに輝く芒かな

2013年(平成25年) 第47回 北海道俳句協会賞 応募作品
 

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