あ い つ

残暑見舞い憎いあいつに先ず一筆
イヤなんて言ってないけどアブラガヤ  
たましいの半分は海秋の鳶
芒にもちからありけり野分潮
雨月かな逆さ結びが魚になる
叱られたことのない子や花芒
兄弟に一本ずつの一位の実
秋草のかすかに鉄の匂いして
雪蛍身より離るるもの増えて
末席がいい風花がよく見える
死の話かぁるく背高泡立ち草
寺町という漁師町薮柑子
つぎつぎに些事難題と風邪心地
冬晴れや柩ゆっくり運ばれて
晩年の長さ雪降る雪つもる
銀漢に抱かれるための柩かな
骨相も美しくあれ朴落葉
七草を吹いて激しき気性など
故郷と話す算段冬かぶら
どこまでが故郷どこまですべりひゆ
今がいいこのままがいい芹なずな
二ン月のエプロン晩年悪くない
雪像の眼の奥の戦火かな
春光を買いに行く日の靴磨く

2014年(平成26年) 上期 氷原帯投句作品

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