桜 湯

銀杯に溢れる体感流氷期
三寒の口紅きつくきつく塗り
春燈や饒舌にして人帰す
朝寝して一日さびしい耳の裏
そば売りの白衣のうしろ鳥曇
山連れて母がくる日の菜飯かな
薬包紙ニセ札に似て春の風邪
桜湯に人を殺めし夢をみる
くたくたと春風町内会に葬一つ     
少年の声の尖りにみる春愁

1987年(昭和62年) 氷原帯 下期俳句鍛錬会応募作品 『桜湯』
 

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