も う 少 し

頬杖をついたふりして春の書架
木の根あく我に生涯おとこ眉
好きなものみんな集めて鳥帰る
春愁が遊んでおりし身八つ口
ハンカチの膨らみほどの花辛夷
金平糖の真ん中を行く祭りの子
もう少しいい人でいる半夏生
居心地の良さに任せて風知草
真っ直ぐに開かぬ抽斗星月夜
がらんどうの秋の電車に運ばれる
雁がねや出せない文が一つある
アイロンの余熱にたたむ秋愁い
身繕い終えて風船蔓かな
実鬼灯五感あやしくなりにけり
どの道も男にあたる蛍草
暗がりを面白がってウメモドキ
笹鳴くや眠りたい日の固枕
ストッキングに絡みぐせあり冬の葬   
柚子湯して六道までの指を折る
寒月夜サランラップがまた切れる

2008年(平成20年) 第42回 北海道俳句協会賞 応募作品
 

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