尋 ね 人

菜の花や後尾ゆらして尋ね人
物種の闇くぐる時不整脈
沈黙がこわくて花の終らない
折鶴の発ちて一気に落花
薬屋の風船ふいてまた欠伸
高階に人の声する花林檎
炭山に旗豆飯はふっくら炊けた
高空は風ふくらしも今日立夏
麦藁帽目線真っ直ぐに故郷
海市抱き甘やかしての昨日今日     



   寒 夜

里芋煮るしおりずらして源二の書
大根干すバレリーナは気取り屋で
落葉掃く熱いミルクは熱いうちに
紅葉転がるその先々に甘美な死
ななかまど死後までついてくる気か赤  
ぴかぴかの腕時計白菊の首に触れ
沈殿する夢あぶり出して冬木
いちにんのいのち毀されそうで雪
かなかなかな寒夜動かしがたきかな
生き下手な男大ぶりな日記買う

1991年(平成3年) 氷原帯 上期俳句鍛錬会応募作品 『尋ね人』
下期俳句鍛錬会応募作品 『寒夜』 準賞受賞

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