【いしかりガイド】
無 辜 の 民

2015.07.30 公開
2020.09.05 更新


■ 石狩-無辜の民- 画像画像画像画像画像 画像

『この地に生き この地に埋れし 数知れぬ無辜の民の 霊に捧ぐ』 画像

彫刻家・本郷新(1905-1980)の代表作のひとつ。
もともとは中東戦争の中で悲惨な状況に追い込まれた民衆の姿をモティーフに制作された15点の小品シリーズ(1970年)。
抑圧された人間の典型を彫刻にすることで,世界平和を希求した作品。
一様に布を巻きつけて身をよじり,人々の苦しみと悲しみを全身で表現。

シリーズのひとつ「虜われた人T」を高さ2mに拡大したブロンズ像が「石狩-無辜の民-」 画像

1981年6月,本郷自身の希望により彼がこよなく愛した石狩浜に,『石狩』と題して設置された。 画像
明治期の開拓民たちの過酷な歴史を物語る,開拓者慰霊碑でもある。

■ 「無辜の民」 とは

罪も無く,自由を奪われ虐げられた人々
暴政や戦争,あるいは天災に巻き込まれた人々

■ 私見

制作意図が異なるものをあえて”流用”してきたということは?
高名な芸術家のワガママなのだろうか?
設立時,古くからの町民の中には違和感も少なからずあったらしい
率直な想いとしては,できれば石狩の開拓そのものをモティーフに制作された作品であったなら,より嬉しかった
最近になって,本郷新が『石狩』と題する記念碑の制作を構想していたということを知った。
「無辜の民」とはまったく異なるもので,高さ20m,幅6mの巨大な塔をイメージしていたという。
開拓者たちの喜怒哀楽のすべてをモティーフにしたこの作品は,残念にも素描でしか残されていない。
癌に侵され志半ばで逝った本郷の石狩を愛する気持ちが伝わってくる。
それだけに,なぜ「無辜の民」に置き換えられたのか…謎である。(2016.12.26 記)

朝日新聞デジタル - 素描が伝える本郷新最後の夢


(朝日新聞デジタルのこの記事へのリンクが切れていたことに気づきました。
とりあえず記事のコピーへのリンクに切り替えます。 2020.08.22)
(new)
『石狩浜の百年記念塔』と銘打ったテーマ展がひらかれている (2020.09.04〜10.05)
その一環として石狩浜海浜植物保護センターにおいて”「石狩」製作模型”なるものが展示されている。上記の朝日新聞デジタルの記事と併せ読んで,一見の価値はあるだろう。
本郷がこの地に作品を設置しようとしていた真意の一端を垣間見ることができるかもしれない。
とはいえ高名な芸術家だからといって,私などの凡人には,いつまでもそのすべてには付き合いきれない思いもある。(2020.09.05 記)


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