朝 寝

リラ噴きぬうしろに人の気配かな    
花曇さみしい時のさみしい目
芹の水しぼれば一山ぬっと出る
馬の目に吸われ三月しずくせり
大朝寝長さの違う足の指
朝寝して眉のあたりにソースの香
朧の夜魚燐ゆっくり発色す
鉛筆を研ぐあさあさの花こぶし
振り向けば蝶の目玉と合いそうで
恋猫と同じ歩幅になっている
男ぶり女ぶりかな粉吹薯
こんにゃく煮る村は車座になった
新米下げきのうの空家をまた通る
音感のずれて冬木のかたちかな
流氷やだれも知らない時間です

1997年(平成9年) 第33回 氷原帯新人賞 受賞作品 (既発表作品15句)
 

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