石 狩 野

ここからは秋ここからは石狩野
空はいつも円いと思う獺祭忌
産土が消えて浮かんで野分潮
ハンカチに包んでみても石蕗の花
冠雪の話うきうきかりんとう
雨の月面倒くさくなっただけ
俎板に急ぎ足なる月暦
明るくてやがて暗くて年の暮れ
雪蛍きっとどこかに傷がある
動くものみんな筆箱汀女の忌
ふらっと来てふらっと家族粥柱
玄関に檸檬返事のまだ来ぬ日
父の声秋の果実はごつごつと
冬瓜の中の中まで風吹いて
面倒な話はきらい新走り
牛蒡煮てそれから後は雪降って
卵黄を大きく揺らし雪の嶺
素面なら気が合いそうな実千両
雪女なのか幻視かよく動く
一病も去年や今年と渡りたる
一月は大きな大きな縄である
寒晴れの滑稽さにはかなわない
その日までの蒲団のつづきとふと思う  
ふるさとが小さくなって夏兆す

2015年(平成27年) 上期 氷原帯投句作品

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