花 緒

身辺を丸ごと洗い青嵐
籐椅子の深いところで夢を見る
水菓子を買って帰った日のことを
一人が良くてこのまま水中花
豆の花触れた先から眠くなる
原稿の角を合わせている白露
ほろ酔いに似て三秋の出入口
白桃にゆっくり闇が整いぬ
秋湿り提灯の紙たたみおり
合歓の花傾いている庭箒
湯上りの気分こわさぬよう木槿
立ったまま花緒ただせり杜鵑草
かすかに声かすかに音が葛の花
うたた寝のあとの葡萄のおもさかな
ときどきは揺れてもみたり通草の実
缶ケースの中は丸薬萩の月
長椅子にいつか千草の二三本
木の実降るたまにはイタリアンレストラン
ちちははのいないふるさと新豆腐
夕野分なにか忘れてきたような

2014年(平成26年) 第48回 北海道俳句協会賞 応募作品
 

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