さ ち 子

雪の音つけてバス停まで一人
春光に紅の一刷毛諸九の恋
妻帯を普通のように春みかん
「持ち出し厳禁」わたくしだけの春愁  
整える一息のあり花の前
さち子的さくらに会いに坂の街
さよならを口に出すまでひこばえる
老人の勝手体操鳥雲に
一人の骨格消えてから 桜
まんまるな午後の時間と花通草
夕陽落つまでの時間を実はまなす
夏鴉ぽこぽこグラタン焼き上がる
欄干に斥候カラス夏河畔
芍薬の後ろわたしに私生活
音階が少しずれてる夏蓬
ふっと死がこわくなるよね花菖蒲
白玉のぷるぷる婚姻のかたちして
山法師白い 戦争がはじまっている
平手打ちされたることも蛍の夜
式服に残る香のあり夏薊
歳時記の真ん中辺り夕端居
丸橋を渡り切るまで蓮の雨
はまなすの実の熟れる頃またどうぞ
八・一五朝から時間起立する

2015年(平成27年) 下期 氷原帯投句作品
 

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