金 魚 玉

雪解急ポケットの数増えており
ふわふわと桜の上をゆく齢
手を上げていれば桜に会えるかも
黄泉までの道に桜湯さくら花
花曇一輌ごとの軋みかな
鳥雲にコーヒーカップの触れる音
段取りの脚忙しき春の鴨
骨箱は同じ大きさ百千鳥
平衡な五感を保ち黄水仙
戦争がつくられており花れんぎょ
ブランチは大皿がよい初の蝶
八朔やいつもうしろに兄の声
少年の夢の挫折か貝櫓
ふるさとの山と端居をしていたり
母あらば娘のままで夏至の夜
こぐま座の夢の一つが滴せり
はみ出した糊と遊んで夜の秋
真っ直ぐな恋をしました夏帽子
新聞を濡らしてつつむ終戦日
草も木も人もきらいで金魚玉
ジェラシーを軽くとばして木下闇
海月のたり たましいが追いつかぬ   
動機ならここにびっしり桃の箱
ふるさとはがらんどうなり苜蓿

2016年(平成28年) 下期 氷原帯投句作品
 

- 72 -
  

【花畔・網】