貝 風 鈴

今頃になってよく鳴る貝風鈴
秋の空落款強くつよく押す
見たような気になっている蛍の火
人はみな毀れやすくて鉦叩き
切株を真中に秋が囃しおり
エプロンのままで失礼萩の風
ふるさとに小さき裏窓反魂草
聞き流すこと多くなりすべりひゆ
オムレツが上手に焼ける野分あと
原稿の進み具合や秋桜
まだ来ない人が一人韮の花
一群の芒日延べをしてしまう
秋祭りなにかがポンと空いた音
いつまでも少年でいる猫じゃらし
踏んで一歩ながめて一歩ナナカマド   
秋入日この手離せば遠くなる
正露丸包んでからの黄落期
蛇笏の忌峡の奥まで男声
あの頃がふと立ち上がる雁の列
秋涼し鋲の打たるる音がする

2016年(平成28年) 第50回 北海道俳句協会賞 準賞受賞作品
 

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