鵙 日 和

草笛のかすれモノクロ写真集
神童の顔した猫のいて雨月
秋刀魚焼くあるは恍惚ばかりなり
鳥渡る両手いっぱい空時間
ポケットを裏返してみる花野
いちめんの薄めざめの動悸かな
木の実落つモデルバーンの馬齢音
高階に雲がびっしり葉鶏頭
横顔が好きで柳絮を飛ばしおり
薊あざみ忘れてしまっていいですか   
不器用な男に惚れて露の音
居心地がよくてわたしと赤蜻蛉
利き腕をはずしてからの鵙日和
秋の蚊の客のうしろに回りたる
シネマ行きのバスに鬼灯あかりかな
白菊のたわわにありてしずかなり
ななかまどぽぉーんと弾け喪章など
よく見れば露の後先赤のまま
行間をびっしり埋めて蚯蚓鳴く
逆縁の話もすこし茸汁

2001年(平成13年) 第35回 北海道俳句協会賞 応募作品
 

- 31 -
前頁 目次 次頁

【花畔・網】