石狩川河口での遭遇
番外 02
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砂嘴先端2014 |
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もくじ |
2014.09.16 公開
2018.07.12 更新
2014年夏,石狩川左岸河口砂嘴
今年も面白い。
6月から7月にかけて,石狩川左岸河口の砂嘴先端はひょろ長く伸びる季節的徴候が毎年決まって観察される。
いつもだと砂嘴先端から直接伸びるのだが,今年は様子が違った。
6月になっても砂嘴そのものは一向に伸び始める気配を見せない。
今年は伸びないのかもしれない,自分の仮説に対する自信に揺らぎを感じ始めていた。
が,6月のなかば,砂嘴先端の沖合い100mほどの川の中に,島状の砂州が浮上してきている。
必ずしもすべてが海面上で繋がっているわけではないが,長さおよそ100mのほぼまっすぐな細長い砂州である。
潮位や気圧の高低の影響を受けるのだろうか,観察する日によって大きくなったり小さくなったりする。
浮き沈みしながらも7月,8月,徐々に砂嘴に近づいてきつつあるのではないかと思われた。
9/9,特に期待もせずに行ってみると,ひょろ長い砂州は砂嘴先端に完全に接合していた。
もはや"島"ではなく,先端に突き出た砂嘴の一部である。
5日後(9/14),入江状になっていたくびれ部分がとりのこされた形で中海になっていた。
↓ 拡大 ↓
2014.06.17
(a) |
前回(6/7)まではほとんど確認できなかった。
この日初めて,浅瀬となってわずかに水面上に現れつつある砂州を確認した。
2014.06.20
(a) |
(b) |
完全に砂州化。沖合い約100m,長さも100mほどと思われる。
手前は,砂嘴先端に現れた突起。長さおよそ20m。(a)
砂州上には水鳥たちが5羽。(b)
2014.06.25
(a) |
水面すれすれか,ほとんど水没している。
水深が浅いため波が砕けていることで確認できる。
2014.16.30
(a) |
中心部がしっかりと再浮上。水鳥たちも。
2014.07.04
(a) |
(b) |
地上部がかなり成長。水鳥たちが目白押し(60羽ほど)。
2014.07.09
この日も40羽ほどの水鳥たちが憩う。砂州と右岸の間の澪筋を漁師の小舟が走る。
2014.07.18
(a) |
(b) |
こちら側の砂嘴にかなり近づきつつある模様。
2014.08.09
(a) |
(b) |
この日はほとんど水没。途切れ途切れに小さく顔をのぞかせる砂州にはアオサギも。
2014.08.26
水面上に大きく現れる。上流側先端は,砂嘴まで30〜40mほどまで接近したのではないだろうか。
2014.09.09
えっ!?思いがけず砂嘴に繋がっていた。
(a) 砂嘴の川側から。
(b) 砂嘴の海側から。
(c) 繋がった砂州の先端近くから砂嘴側を振り返る。
繋がった砂州の上には30羽ほどの水鳥たちが休んでいた(d)が,私がぶしつけにずかずか近づくから彼らは飛び去る。
(遠慮せずに歩かないとGPSの軌跡が取れないのです。ごめんなさい)
ややしばらくすると再び彼らは戻ってくるのだが,申し訳ないのは彼らに対してだけではないのだ。
デッカいカメラを構えて彼らの姿を狙っていた,辛抱強い皆さん(e)にもごめんなさい。
入江状になった接合部(f)は,5日後には周囲が閉ざされた中海になっていた。
2014.09.14
砂嘴に接合した砂州は,長さも幅もさらに成長していた。が,この日は水鳥たちの姿はなく,気分がラクだった。
(a) 砂嘴の川側から。
(b) 砂嘴の海側から。
(c) 繋がった砂州の先端近くから砂嘴側を振り返る。
(d) 砂州の先端近くから,対岸の来札水制工を望む。水制工のほとんどまっすぐの延長線上にあることが分かる。
(e) 先端までの間に,水面ひたひたの部分が数mあって,砂に足が埋まって抜けなくなるのではないかとの恐怖がよぎった。
なんとか駆け抜けることができた。波の荒い日は絶対に危険!
(f) 中海。
2014.09.18
歩きはじめようとすると突然強い雨が降り始めたりして不安定な空模様。
接合した砂州は荒い波をかぶってほとんど水面下。歩行可能な部分はかなり短くなった。
(a) 砂嘴の川側から。
(b) 砂嘴の海側から。
(c) 砂州の浅瀬は伸びているのだが,ときおり強い波が襲いかかるのでとても遠くまでは歩けない。
2つできていた中海の周囲を歩いて場所と形をGPSロガーに記録する。
まわりはところどころ液状化している。棒(流木利用のメジャー替わりの杖)を軽く刺しただけで50cm近く埋まる(d)。
足を踏みこんだら身動きできなくなるだろう。
2014.09.23
好天。波も静か。砂州も再び伸びる。
ただし,明らかに海側(見かけ上の左側)へと押し曲げられつつあるのが分かる。
(a) 砂嘴の川側から。
(b) 砂嘴の海側から。
(c) 水面ひたひたの浅瀬の先に,先端は小島化している。
すこし離れて右側(川側)に並行して浅瀬が伸びていて,流木が引っ掛かっている。
(d) 砂州の先端近くから砂嘴側を振り返る。
前回あった中海は2つとも干上がっていた。
2014.09.27 空撮
10:24 am |
さけまつりの日,たまたまヘリコプターに搭乗する機会を得た。
一角獣のような角を伸ばした砂嘴先端の姿を空中からとらえることができた。
角の外側にさらに黒く広がっているのは,水面すれすれの浅瀬だろう
2014.10.02
(a) |
(b) |
この日のGPS軌跡は,9/27の空撮地形とほとんど変わらないものだった。
9/23よりやや短くなっているが,付け根は逆に広がっている。
(a) 砂嘴の川側から。
(b) 砂嘴の海側から。
さてこの一角獣のような出っ張りが,10月になっても一向に消滅の気配を見せずに頑張っていることに,やや驚かざるを得ない。
2014.10.08
この日,石狩浜の夕陽と皆既月食とを合わせて堪能しようと夕方出かける。
先端をまわってデータを取り終えたあたりでイキナリの雷雨。
這う這うの体("ほうほうのてい"って,こう書くンだ。この歳になってまた新たな発見!)で逃げ帰った次第。
(a) 砂嘴の川側から。
(b) 砂嘴の海側から。
(c) この日また新たにできていた中海に夕陽が映える。
2014.10.13
(a) |
(b) |
そしてついに先端の突起が消滅していた。
おそらく10日から11日にかけての強い北西風による激しい波のなせる業だったと思われる。
(a) 砂嘴の川側から。
(b) 砂嘴の海側から。砂嘴先端はまぁるいなだらかな曲線を描いている。
ところで,10月2,8,13日,先端近くをうろついたそれぞれの時刻におけるおおよその潮位を比較してみた。
(石狩新港潮位計および,石狩河口水位計のデータに基づく)
日付 |
先端を歩いた時刻 |
その時刻におけるおおよその潮位 |
備考 |
10/02 |
11:50 ころ |
約 15cm |
高気圧下にあったが,満潮から干潮へ移行する中間くらい |
10/08 |
16:20 ころ |
約 40cm |
まさに大潮の満潮時で,宗谷海峡あたりを小さな低気圧が通過中 |
10/13 |
12:00 ころ |
約 0cm |
ちょうど干潮時にさしかかり,かつ高気圧の圏内にあった |
表から,13日の潮位を基準にすれば,2日は高低差で15cm分,8日にいたっては40cm分先端が伸びていたということが分かる。
河口テラスでの正確な勾配はわからないが,高低差40cmということは,数10m長かったとしても不思議ではない。
砂嘴先端のその後の地形変化
2014.11.20
先端の突起が消滅していた10月13日移行の変化を重ねてみた。
10月24日にはあまり大きな変化は見られなかったが,それでも軌跡(先端地形)は明らかに右へ,すなわち海側から川側へと押し戻されている。
冬型の気圧配置からの北西風が強まり出した11月に入ると,先端地形の右方向への動きも連動して強まっている。
同時に波の爪痕(浸食)もあちこちで観察される。
いまのところ浸食は浜崖そのものまでは達していないが,崖下のバームはかなり削られている。
(a) |
(b) |
(a) ヴィジターセンターから浜辺に出たあたりの車両進入防止柵から110mほど。浜崖ぎりぎりまで削られる。
(b) 先端から120mほど戻ったあたり。上の地図の(11/20)軌跡が凹んでいるところ。通常でも下の段差までしばしば波が到達する。
砂嘴先端調査,今年はこれでおしまい
2014.12.19
水際で倒伏したヨシをおっかなびっくり踏みつけながら進んだり,凍ってツルツルになった護岸ブロックをよじ登ったり・・・
冬の調査行は過酷である。
おまけにGPSロガーの電池切れに気づくのが遅れ,軌跡データがかなり欠落してしまった。
先端部分はしっかりとれたのは不幸中の幸いか。
トシを考えるとそろそろ,冬場は月1が限度でしょうかねぇ。
というわけで,これが今年の最後の記録になる(と,思う)。
予想通り,軌跡(先端地形)は右へ,すなわち海側から川側への動きを続けているのが分かる。
この傾向は来年3月まで続くことが予想される。
一方,浜崖の浸食状況。
浜崖に肉迫する浸食は見られるものの,ここまでのところでは浜崖そのものが削られるほどには至っていない。
年明けの1〜3月どうなるかは予断を許さない。
(a) |
(b) |
(a) 前回11/20の(a)とほぼ同じ地点だが,崖の欠損部から先端方向に向かっておよそ200mほど新たに削られている。
(b) こちらは前回は無傷だったところ。
車両進入防止柵から500mほどの崖欠損部を挟んで,およそ100mほどの長さで崖下バームが削られていた。
両方とも雪に覆われているところからすると,前日の爆弾低気圧の作用ではなく,12/11〜12の強い北西風が残した爪痕かもしれない。
1971年の砂嘴先端の形状が,今年(2014年),島状の砂州が砂嘴先端に繋がったのを初めて確認した日(2014.09.09)の軌跡形状とあまりにも類似していることに驚く。
ただ,1971/06/10と今年とでは,島状の砂洲と砂嘴先端との繋がり方はまるで反対であることに再び驚く。
そして10日後の1971/06/20には,島状の砂洲のもう一方の側(上流側)も砂嘴先端に繋がり(今年に類似),大きな中海が取り残されている。
砂嘴先端調査,2014年度の締めくくり
いったんは,”今年はこれでおしまい”,とかいいながら,そこでおしまいにするわけにもいかない。
2014年の冬は2015年の春まで続くわけなので,2015年3月までの動きを観察・記録することによってようやく完結する。
■ 2014年10月 から 2015年3月 まで(冬期)のまとめ ■
10月から3月まで,河口部を狭めるように左から右へと砂嘴が押し出されていることがはっきりと見てとれる。
この傾向は例年必ず確認される。
先端突部については,10月から1月まで徐々に凹んできたが,2月にはもりかえす動きに転じた。
■ 2014年度冬期の浜崖浸食 ■
この冬浜崖の浸食が見られたのは,図のA,Bの2ヶ所。
A : 2014.12.19 |
A : 2015.01.14 |
A : 2015.02.17 |
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B : 2015.03.14 |
B : 2015.03.28 |
Aは三角点から約50m南西のあたりからさらに南西方向に長さ100m強。
Bは車両進入防止柵の前後に長さおよそ250m。
浸食による崖の後退の被害は比較的小さく,激しいところでも数mに収まっている。
Aの浸食は1月,Bの浸食は3月で,時期はずれている。
またAとBにはさまれた部分では,崖までは達しないものの崖下のバーム(砂が堆積した平坦部,汀段)がかなり浸食された。