石狩川河口での遭遇
番外 04
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砂嘴先端2015 |
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2015.05.16 公開
2018.07.12 更新
2015年夏,石狩川左岸河口砂嘴
中海・速報 2015.05.14
この日午前中まで雨が残り,潮位も高く波も荒かった。
Aの外縁部,狭いところでは幅2〜3m程度しかなく,頻繁に波が乗り越えて中海に海水を補給する。
軌跡をすべて記録するために歩ききるのはややコワイものがあった。
AとBとはときにつながることもあるようだし,形は容易に変化する。
好天の穏やかな日が少し続くと,中海そのものが干上がって消滅するだろう。
(速報というにはやや間延びした 2015.05.16 記)
中海・やや詳報 2015.05.19 (上の Google earth の図も差し替えてあります)
最初の4枚は,各点から前方を眺めている。(左側が中海)
最後の2枚は,各点から後方を眺めている。(右側が中海)
外縁部が簡単に外海からの波に乗り越えられていることが分かる。
この中海はどちらも,海が取り残されたものではないだろう。
もともとできていた砂嘴先端のバーム(堆積平坦地,汀段)の低地(バーム頂部より内陸側)に,荒れた海によって外から海水が注ぎ込またものと思われる。
歩いた時点(午後2時前後)では明らかに中海の水位の方が外海よりも高かった。
しかし前日からの低気圧による吸い上げ効果により,外海の潮位はこの時点より10〜20cm高くなっていたと考えられる。
中海・おそらくこれでお仕舞い 2015.05.26
f |
g |
あれだけ大きかった中海も,結局2週間ともたずにあっけなく干上がって消滅していた。
上は,f点,g点からそれぞれ矢印の方向を眺めた写真である。
中海の周縁部,水際だったと思われるあたりに木屑などのゴミが寄せられている。
中海の底に当る部分にはゴミはほとんどなく,漣痕(砂紋,波跡,砂漣)が残されている。
さてそろそろ6月。
今年は砂嘴が伸び出すだろうか,それとも去年のように島状の砂州が現れるだろうか???
(2015.05.28 記)
砂嘴先端,2015年夏の動きは僅かだった
2015.09.12
■ 2015年3月 から 2015年9月5日 まで(夏期)のとりあえずのまとめ ■
2014年度冬期(2015.03.14)に河口部を狭めるように押し出した凸部は4月に入ってたちまち削られつつ,全体に海側への揺れ戻しが見られるのはいつもの年と同じパターンである。
しかし砂嘴先端部の動きに注目すると,北方向への伸び出しは4月に早くも最大になり5月にやや短くなって,6月以降は9月まで(この間10回調査)ほとんど変化が見られない。
4月の最大の伸びもたかだか35m程度であることも合わせ,ここまでは実に動きの少ない年(夏)だったといえる。
ちなみに,次に6月から9月までの軌跡のみを示す。
合計10回の軌跡を重ね描きしたものだが,軌跡の幅の8mとか10mというのはGPSロガーのほとんど誤差の範囲内。
さらに歩いた日による潮位の違い,あるいは波の荒さなどを考慮すると,先端部でも10〜20m程度の出入りだったものと推測される。
2015.10.29
■ 2015年3月 から 2015年9月 まで(夏期)のまとめ ■
10月に入ると爆弾低気圧や大型台風の影響により,浸食局面を迎えた。
9月最後の調査である21日の軌跡を夏期のデータとして追加したのが上図である。
動きの少ない夏だったという結果に影響を与えるものではない。
砂嘴先端,2015年秋の浜崖浸食
2015.10.29
■ 2015年10月 ■
2015年10月は北西(西から北までを含む)最大風速7m/s以上の日が13日を数える。
しかもそのうち10m/s以上を記録した日は,2日(10.3),8日(10.9),9日(11.2),24日(13.1),25日(13.9),28日(10.0)と6日に及ぶ。
これだけの強風を伴う台風,低気圧に襲われるのは,石狩の10月としてはほとんど異常ともいえる。
(ちなみに2009年から2014年までの6年間で,10月に最大風速10m/s以上を記録した日は 2010.10.26 の唯一日のみ。12.6m/s)
リアルタイム・ナウファスにおける石狩湾新港の波浪状況 2015年 10/01-07,10/07-13,10/23-29
有義波高が5mを超すというのは,石狩では年間数回しかない大時化を意味する。
それがこの10月だけで2度も記録されている。
水文水質データベースにおける石狩河口水位観測所の水位月図 2015年 10月
石狩河口水位は,降雨などによる石狩川の流量変化よりも海面の潮位変動に大きく依存する。
つまり,石狩河口水位と潮位(新港)はほとんど変わらない。
石狩における平均的潮位は30cm程度(干満差は約30cm)。
グラフではそれを50cm上回る80cm超が10月だけで3回記録されている。
通常浜崖が浸食されるのは12月から3月の真冬であるが,まれに大型台風などにより秋に浸食を受ける年もある。
2015年はまさにそのケース。
10/10 に歩いた時にはそれ以前とほとんど変わらなかった。
しかし 10/23 には車両進入防止柵より砂嘴先端方向へ70mあたりを中心としてかなり激しいバームの浸食が見られた。
この段階では浜崖までは達していないが,しばらくの間はこの部分が浸食のターゲットとされるものと思われる。
(a) |
(b) |
(a) は北東から南西の方角を
(b) は逆に南西から北東の方角を写したもの。
浸食されたバームの崖の高さはmax1mほど。
波がその崖ぎりぎりまで迫っている。 |
10/24,25 とてつもない暴風が長時間吹き荒れた。
10/26 なお海はかなり荒れていたが,車両進入防止柵の前後6〜700mほどを歩いてみた。
予想通り浸食はバームを越えて浜崖に達し,およそ70mほどの区間で崖が鋭く削られていた。
2015年3月の浸食部分とわずかにオーバーラップしているが,微妙に砂嘴先端方向にずれている。
崖の後退はさほどではなく,崖の上に設置されている柵はかろうじて無傷だった。
(c) |
(d) |
(e) |
(f) |
浜崖浸食部分のちょうど真ん中あたり。
(c),(e) は崖直下で左右を見る。
(d) は汀線から。
(f) 汀線から浜崖までの距離は5mそこそこ。
波が浜崖のすぐ下まで迫っている。 |
砂嘴先端,2015年秋〜2016年春 の浜崖浸食まとめ
2016.06.02
■ 2016年1月〜2月 ■
2016年1月から2月にかけて(正確には3/1まで)の浸食は激しかった。
狙われたのは,車両進入防止柵が設置されるあたりを中心に,その前後それぞれ300mほどの区間。
浜崖の後退は最大で10m近くになったものと思われる。
崖の上に3ヶ所設置されていた立入禁止柵(上図 A,B,C)は,浜崖の浸食後退により A,C が跡形もなく壊滅,B のみダメージを受けつつなんとか一部が残っている。
2015年10月に浸食された部分より南西(図では下)方向,とりわけ車両進入防止柵を中心とするあたりの浸食が最も激しい。
3/8 以降,波による浜崖の浸食は見られないが,削られて切り立った崖の側面の自然崩落は続いている。
[参照]
石狩川河口での遭遇 - 立入禁止柵受難
石狩川河口での遭遇 - 危険です!
車両進入防止柵近辺の図としては
石狩川河口での遭遇 - 賞味期限にこだわるワケ の 添付図
このほかでは砂嘴先端部,中道の突き当り(定点観察のT点)付近,三角点から浜に出た近辺,などで昨秋以降に波による浸食が見られたが,いずれも浜崖が後退するほどまでには至っていない。
砂嘴先端,2015年度のまとめ ・・・ 植生の崖下進出と浸食を受けた部分
2016.06.12
■ 植生の崖下進出 ■
A の部分については「定点観察」で追っている通り,崖下への進出が著しい。
もともと崖が低かったのでもとの崖がどこなのかいまでは見分けがつかないくらい連続的かつ密に進出している。
浜崖そのもの(=砂丘)が前進する兆しもうかがえる。
B,C は崖が高いので崖下の植生が崖上の植生につながるとは考えにくい。
とくに C は植生密度が薄くてまばらである。
今後波にさらわれる可能性も大きい。
■ 2015年秋から2016年春にかけて浸食された部分 ■
G の部分についてはすでにまとめてある通りである。
そのほかでもこの冬 3ヶ所ほどで波による浸食が確認された。
しかしいずれも浜崖ぎりぎりまで迫られてはいてもバーム(汀段)に崖ができる程度でなんとかおさまってくれた。
したがってこれらの部分では浜崖の後退は見られない。
D |
浜崖の先端部分 |
12月以降。4月になっても崖ぎりぎりまで波に洗われていた。 |
E |
中道の突き当り近辺 |
この部分の浸食は10月初めに集中。定点観察参照。 |
F |
三角点近辺 |
この部分の浸食は1月。長さ70m程度ともっとも軽微。 |