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石狩川河口での遭遇

番外 05

砂嘴先端2016 もくじ

2016.08.26 公開
2018.07.12 更新


砂嘴先端,2016年の夏の動きも僅かだった

2016.08.26

■ 2016年3月 から 2016年8月1日 まで(夏期)のとりあえずのまとめ ■



2015年度冬期=実際には2016年1,2,3月,大きく川幅を狭めるように突き出した砂嘴先端は,融雪期に入るといつもの年と同様押し戻された。
しかしこの動きは5月中に終わり,6月以降は8月に入ってもほとんど砂嘴地形は安定している
これは昨2015年夏期に見られた動きとほぼ同じである。
昨年に引き続き秋までは地形変化に乏しい年と思われた。

ところが・・・

8月の半ばを過ぎて状況が一変する




砂嘴先端,夏の浸食&異形

■ 2016年8月 ■

2016.08.26

台風7号,11号,9号が立て続けに北海道を襲い,日本海側では風はさほどでなかった代わりに大雨を降らせた。
石狩川も大増水する。

石狩河口の水位データと,石狩湾新港における潮位データを示す。

水位データ

潮位データ
私が歩いたのは台風7号が去った直後の18日と,9号が去った直後の24日。いずれも午前11時から12時ころ。
石狩河口水位観測所は河口から3.0kmの位置にあり,通常はここでの水位と石狩湾の潮位はほとんど変わらない。
ところが歩いた時間帯,18日は40cm以上,24日では70cm以上川の水位が高い。
川幅いっぱいの激流となって海に流れ出る。

18日,これほどおびただしい数の流木を見るのは初めてのこと。
さすがに3度目の増水のためか,24日の水面には流木は少なかった。

1日,下図のA点あたりで目撃した誰かの手首は,流れがほとんどないのでぷかぷかただよっているだけだった。
が,24日の同じあたりは河口の出口にもかかわらず渦を巻いて流れていた

砂嘴先端の川側は無惨に浸食された



上図に記載した撮影ポイント a,,b,c,d での画像を示す。

a

c

e

b

d

f
1日(a,b)には岸辺の水際を安心して歩くことができた。
18日(c,d),24日(e,f)はとても無理。
水際は削られて崖状になり,崖直下でも水深数10cmから1mほどもありそうな激しい流れ。コワい
崖の上も次々にひび割れして崩れる(18日24日)ので,少なくとも1m以上は離れて歩かないと危険だ。

18日24日との大きな違いは,18日では崖上はほとんどまだ砂地だったのに対し,24日には完全に砂丘草原が削られているということ。図にも記したが,大きいところ(L)でおよそ50mも川岸が後退している。


B (8/1)

B (8/18)

C

C

D

D
そのほか,図のB点あたりはもともと低地であったところに川の増水で水が侵入し,18日には水際に凹凸ができていた。
24日C点はビーチカスプによる単独の突起と思われ,先端D点あたりの干潟状の浅瀬と連動しているのかもしれない。


2016.08.28

台風が去って落ち着いた28日,あらためて砂嘴先端を歩いてみた。

この日の石狩河口の水位データと,石狩湾新港における潮位データを示す。

水位,潮位データ
すでに平常状態で,河口水位と新港潮位とはほとんど変わらないレベルだった。
そして砂嘴先端はおよそ60m突き出して異形を呈していた。



撮影ポイントにおける画像

a

b

c

d
a のあたりで崖の高さは 120cm 以上。
b から c にかけて 170〜180cm でもっとも高い。
d までくると崖は低くなり,ほとんど砂地となる。

そしてその先に異形が現れた。
24日D点付近の干潟状の浅瀬が大きく成長し,水位が下がったのにつれて水面上に姿を現したもの(陸化)と考えられる。

 

 

 

 

2016.08.27
なお最後の1枚は,前日の27日 右岸,来札/中村水制工の間を歩いた際に撮った,左岸砂嘴の風景である。

8/30から31にかけてさらにまた大型道草台風10号が接近する。
このあと砂嘴の形状がどう変化するか予断を許さない。


2016.09.04

台風10号が去って落ち着いた9月4日,あらためて砂嘴先端を歩いてみた。

4回の台風来襲を含む8月15日から9月5日までの間の石狩河口の水位データを示す。

水位データ
石狩川に設置された水位観測所は最下流が来札水位観測所(河口から1.6kmの右岸)で,最上流が石狩平水位観測所(河口から237.2kmの右岸)である。
しかし残念ながら来札観測所の観測データはリアルタイムでは公開されていない。
やむを得ず【花畔・網】では河口に2番目に近い石狩河口水位観測所(河口から3.0kmの左岸)のリアルタイムデータを利用することにしている。
ちなみに,8月の連続台風に関連して,層雲峡本流林道のページで石狩平観測所でのデータを記載してある。
最上流と最下流での水位変化を見比べてみるのも面白い。かも。
河口では台風10号による水位の上昇はさほどではなかったことが分かる。
そして歩いた4日にはほとんど通常のレベルだった。
川側の崖下は,歩くことのできる幅が先月28日に比べて心なしか広がったと思われる程度で,先端まで顕著な地形変化は見られず。
しかし先端から海側の汀線では表情に変化が見られた。



先月28日に現れた先端の異形(上図の突起D)はやや短くなった(約50m)代わりに幅が広がり丸みを帯びて安定した形状。

a

b

c

d
付け根中央部が窪んで取り残された海水が溜まっている(b)。
侵入してきたバイクが駆ける(c)。一応注意はしたのですが・・・

そのほかに別の突起E(20mほど)が現れ,さらに島状の州が海中3ヶ所(A,B,C)に認められた。
(図で示した州の位置はあくまでも推定)

突起E

突起E

島A

島A&B

島B

島C




砂嘴先端,台風一過夏から秋へ

■ 2016年9-11月 ■

2016.10.22

【9月,10月の動き】
8月の中過ぎから9月の頭にかけて4ヶの台風に連続して襲われた後の9月は穏やかだった。
しかし10月に入ると一転して西北西の風が強まり,海は荒れる傾向。
9月4回,10月2回,歩いた先端部分の軌跡を示す。



まさに台風一過,9月は川も海も静か。こういう状況下では一般的に堆積局面となる。
沿岸流の微妙な変化によってもたらされるのであろう先端部地形の変化(「芸」といってもよい)が面白い。
歩く都度突起があっちこっちに揺れ動き安定していない。
また図には記していないが,9月中は陸から離れた島状の砂洲が毎回いくつか観察された。

4日 12.2m/s
6日 12.0m/s
7日 10.7m/s
9日 10.7m/s
20日 11.5m/s
21日 10.0m/s
左表は10月に入ってから,石狩において最大風速が10m/s以上を記録した日である。(アメダスによる)
ちなみに9月中は最大風速7m/s以上の日すら皆無である。
強い風の向きはほとんど西北西。海は荒れ,強い波が襲いかかる。
かくして10月の軌跡(汀線)は先端部分の浸食が激しく,押しつぶされたような形に変っている。
背景画像のGoogle earth (画像取得日 2014.10.07) で見ると,安定した緑の砂丘草原部分もかなり削られつつあることがわかる。


【全軌跡の中での位置づけ】
ここで,2008年11月以降自分が歩いた全軌跡(2016年9月終わりまでの8年間)の中で,最近の軌跡がどのように位置づけられるか確認してみたのが下の図である。
台風9号直後で石狩川がもっとも勢いのよかった8/24の軌跡と,10月20,21日の強風・大荒れ直後の10/22の軌跡を,全軌跡に重ねあわせてある。



8/24の軌跡は川側でも海側でも全軌跡のもっとも内縁近くに沿っている。
ということは過去8年間の中で,少なくとも先端部分については砂嘴がもっとも痩せ細ったということを示していることになる。

また10/22の軌跡からは,安定した砂丘草原部分も過去になかったくらいむしり取られていることが分かる。
それは30m以上に及ぶ。


【浜崖の現状】
最後に現時点における先端部分の浜崖の状況を示す。



海側の崖(図では10/11)は2015年12月以降激しく浸食されて後退
今年の春からも,そして現在に至っても依然として後退を続けている。
にもかかわらず,Google earth の背景画像で濃い線で識別される 2014年10月当時の浜崖のラインよりはかなり海側にあって,それだけ海浜植生の前進が認められる。

10/22の川側の崖は,成因の異なるふたつの部分からなっている。
ひとつは,8月に増水した石狩川によって削り取られた崖で,もうひとつはごく最近の海の大荒れによる波に削り取られた崖である。
図中,「川の流れによる崖と海の波による崖との境」と注記されたあたりで川の崖と海の崖が接続することになる。

10/11の海側の崖(緑線)と10/22の川側の崖(橙線)の間には崖はなく,砂丘草原がだらだらっと砂浜に続いている。
また,管理道路の先から先端に続く踏み分け道は,いきなり高さ1mを越す崖に落ち込む形になっているので要注意である。

さらに,こうした削り取られたばかりの新しい垂直の崖の側面からは,砂の堆積速度を推し量る好材料になる賞味期限サンプルが顔を出す。歩くたびに数個のサンプルが見つかり,嬉しいやら忙しいやらの悲鳴の連続である。


2016.11.11

【浜崖の現状・11月の動き】



10月末から11月に入っても引き続き西北西の風が強い。
11/11,先端部の海の波を受けての崖はさらに後退した(黄線)。
一方砂浜はかなり拡大している(赤線)。
この日は高気圧に覆われ穏やかだったことで潮位が20cmほど押し下げられていたことも汀線の広がりをもたらしたと思われる。
なお,図の左下でこの日の汀線(赤線)が 10/11の崖のライン(緑線)より内側に入り込んでいる。
このあたりから下(南側)へ向かって崖の浸食がさらに進んでいることを意味する。

また,定点観察のページで追っている崖下に進出した植生の B,Cエリアでも浸食され崖が後退する傾向にあり,植生たちの前途は多難である。


2016.12.02

先に Topics でも触れたが,11月末 Google earth の背景画像が 2014.10.07 取得から 2016.08.27 取得へと更新された。
それに対応してひとつ前の浜崖現状図を,更新された新しい Google earth 背景画像の上にほとんどそのまま置き直してみた。



石狩川の増水で先端川側が激しい浸食を受け大きく削られた直後の 8/24 の軌跡と 8/27 に撮影(画像取得)された Google earth の背景画像とはほとんど変わらない。
背景画像では先端北西方向に堆積部分が広がりつつあるが,それについてはTopics での 8/28 の軌跡との比較を参照されたい。

最新の GPS軌跡 (11/26) も追加したが,11/11 の軌跡と比して極端な違いは認められない。


2017.03.31

【砂嘴先端・2016年のまとめ】

2016年11月に続いて 2017年3月,Google earth の背景画像が 2016.08.27 取得から 2016.09.27 取得へと再び更新された。(Topics 参照)
ここでは更新された新しい背景画像の上に,2016.08.24 以降 2017.03.27 まで,秋から春までの冬期の推移をまとめておく。

なおこの先端部は,2011年春以降ごく一部を除いては浜崖の浸食/後退はほとんど見られず,浜崖そのものは安定していた。したがって下図の”2017.03.08の浜崖(旧崖)”は6年前の2011年春時点の浜崖とほぼ一致している。
また”2017.03.08の植生限界”は,ここまで浸食されて新たな崖となっているので,”新崖”と呼ぶにふさわしい。
旧崖と新崖との間隔(=植生の進出幅)は現時点では最大で15m程度。
2017.03.08の先端及び川側の植生限界”は,川側においては低い崖になっている。



1. 2016年,少なくとも 8/1 までは地形変化の動きの乏しい夏だった。

2. 8月半ば以降連続する台風襲来による石狩川の大増水を受けて,川側の汀線が大幅に後退した。

3. 大量の土砂が河口から海に流出。沖合に例年とは比較にならないほどの漂砂が供給されたものと思われる。

4. 秋から春にかけての冬期は卓越する北西風と強い波により,砂嘴先端は海側から川側へと押し出されるのが通例であるが,2016年から2017年にかけての冬期は海側汀線がおよそ100m近く膨らんだ。
明らかに沖合の漂砂が運ばれてきて堆積したものと考えられる。

5. 潮位が下がっている日には,水面下の浅瀬(河口テラス)が遠くまで大きく広がっていることが観察されたし(2/15),あるいは汀線から40〜50m沖合に島状の砂洲が形成されていることも目視された(3/27)。
これは,波の状態によれば汀線が現状よりもさらに膨らむ可能性があることを示唆している。


2/15 (浅瀬)

3/27 (島)

3/27 (島)

3/8 (新旧崖)

3/8 (新旧崖)

6. この春の融雪による増水でさらに土砂が海へと押し流されることも予想されるので,それらも含めた漂砂の挙動が今後予断を許さない。

7. なお,海側における浜崖の浸食,あるいは崖から下りて進出した海浜植生の動きなどについては,定点観察のページを参照されたい。([A]のエリア[B]のエリア)



No. 001 〜 010 No. 011 〜 020 No. 021 〜 030 No. 031 〜 040 No. 041 〜 050 No. 051 〜 060 No. 061 〜 070
砂嘴先端2014 砂嘴先端2015 砂嘴先端2017 砂嘴先端2018 定点観察
河口砂嘴の地形変化-総集編
(A) 先端部の季節的変化
河口砂嘴の地形変化-総集編
(B) 石狩砂丘の堆積速度
河口での遭遇 : 目次